走行中に突然起こる悲惨なエンジン焼きつき
 2022.05.11

 私が初めて目にしたのは知り合いのスノーモービルヤマハPZが、わかさぎ釣りに向った先の湖上で突如エンジン停止、それまでは調子よく走っていたようですが、燃料はガソリンと2サイクルOILを混ぜる混合使用で補給していたようです。

事故は走行中突然エンジンが停止しそれ以降何度リコイルを引いてもエンジン始動はなく、その頃他に知り合いのモービル所有者もいなかった制もあって、仕方がなく湖上に置き去りするしかなく、一ヶ月以上に渡って湖上放置となって仕舞いました、、 湖上から引き上げるにしてもモービル同士の牽引が不可欠、それを行う事ができなかったと云うのが大きな理由です。

 そこで急ぎ代わりのスノーモービルを求めるべくヤフーオークションで探していたところ、ヤマハ発動機のスノーモービルET340が見つかって購入したのですが、如何せんヤフオクで購入ともあってか、「無整備」前オーナーが数年は乗っていなかったらしく、修理せずしてはエンジンをかける事も、走ることもできず某ヤマハ代理店へ持込み修理いたし走れる様になり、引き取ると同時に湖上で置き去りになっていたPZを牽引すべく引上げに向いました。

一ヶ月以上湖上放置の為、PZのクローラ(キャタピラ)はしっかりと氷で覆いつくされすっかり氷と覆われ雪に塞がれた状態です、何の道具をつかっても頑なに固まった状態、大きなツルハシで氷を砕いて苦戦の挙句にやっと氷から開放する有様、一方湖上へ乗りつけた修理を終えたばかりのヤマハ発動機ET340に連結し牽引した様です。

もちろん引き上げたPZはそのまま某ヤマハ代理店へ新たな修理に預けました、数日後原因とされる故障連絡があると「xxさん、お持ちになったスノーモービルですが大変な事態になってますよ!!

 エンジン焼きつきによってクランクが真っ二つに折れてますよ、解説するとPZは二気筒エンジンの為、健全な片方のエンジンによって折れたクランクが廻される制で、エンジンケースを突き破りながら回転します、すると上下クランクケースに迄もおよび無慚な亀裂が入り見るも無慚な姿となってしまい、二度と修復不可能なエンジンへと陥ります。

 しかし修理に出せば、エンジンフレームから一旦エンジンを降ろし、そしてエンジン周辺の各部品を外してから、エンジンカバー、シリンダー、そしてブロックを撤去後にピストンが露わに、、治らないながらもそこまでの外す作業工賃はかかってしまっている訳です、その時はエンジン降ろしとエンジンケース分解料金の工賃合わせて17,000円請求、何とか治す気持ちで頑張ったはずが、結末は「エンジン載せ替えるしか」ないでしょう!!

 これが「無整備」オーナーの行きつく終着でしょうか

 2ストエンジンの場合、オイル切れは即エンジン焼きつきを起こす致命傷、では何故この様な事態に陥るのでしょうか?

 ワカサギ釣りシーズンに入ると毎年の様に数台は最悪の末期エンジンを目に止めるのですが、大変ショックを受けます。

 幾人かのモービルオーナーに原因を聞いて見ると以下の事を口にしておりました。


@ 2ストOILなら何でもよいと思ってました、なので2スト原付バイクにいれている安いOILを入れていました。

A いやいや安い、高い2ストOILは関係なく、毎年走行距離が少なく一度OILタンクへ補充したOILが何年もOILタンク内に残ったままで毎年繰り返し走行していた

B 車庫等はなく、またボロボロのブルーシートをモービル上にかけて、半雨ざらし駐車が状態化している

C 万一OILポンプが故障すると危ないので、OIL分離方式を止めて、2ストOILとの混合ガソリンを作ってガソリンタンクへ注入していた


 主に@〜Cの回答者が多いです、2サイクルOILが何らかの原因でエンジン内部へ供給されずに途切れて仕舞うと、高速で上下に動作中のピストンとシリンダーブロックは、金属摩耗を避ける為にガソリンに2ストOILを混ぜる事で、微隙間のOIL油膜を作りエンジン焼けから守っていますが、OIL供給が切れる事でピストン外周金属とシリンダーブロック内金属が時下に接触しながら摩耗する為、瞬く間に超高温状態となって、焼きが廻ったクランクは耐え切れず変形するか、曲がるか、最悪真っ二つに折れるか、イズレニシテモ二度と使い物にならない不能状態となったエンジンとなります、2サイクルエンジンにとって致命的な状態とは何らかの原因でOIL供給が途切れる事態です。

その最大の原因は「無整備」ではないでしょうか? 以下の掲載写真はエンジンクラッチ側のクランクが見事に曲がって変形しています、その制でクランクケースの下側にも亀裂が入っています、おそらくケースの上にも亀裂が回っていると考えられます、修理するとなれば曲がったクランクを抜き取って交換し、更に上下のクランクケースも交換、左右のOILシール交換と、ざっとここまでは思いつきますが、プレス機を使って仮にクランクやベアリングを抜けたとしましょうか、抜くことはできても組付けが上手くできるだろうか? おそらくヤマハ発動機から技術伝達を受けた熟練修理工でもなければ正確な組付けは難しいのではないか、、、この様に感じる次第です。

自身、エンジンケース両側のOILシール交換を行った経験はあるのですが、その時、クランクケースへの組付け(組み戻し)は個々ベアリングに凸ポイントがあってそれを理解した上で組まないと後にエンジン始動際に破壊させて仕舞います、、今のところエンジンシャフトからベアリングやクランクを抜き取った経験は御座いません、プレス機の持ち合わせがない制もあるのですが、もしプレス機が手に入ったら機会を見て抜き取って見たいと思ってはおります、しかし組付け方については情報を得ておらずまったく解らないので手を出しておりません。

 車種にもよりますが、PZのエンジンクランクシャフトは下記写真をA参照頂ければ配列は以下の順番となります、

 @ 左からOILシール Aベアリング Bクランク Cベアリング Dスペーサー Eベアリング Fクランク Gベアリング Hベアリング IOILシール JOILポンプを廻すギヤ

何れもクランクシャフトへ圧入されておりますがOILシールのみは手で引けば抜けます、他は1mmたりとも動きませんので、プレス機を使って抜き差しします。

※ 見せる為に取って置いた物の為、錆が写ってますが、通常数十年始動しない放置エンジンであっても、解体し一定期間外部放置しない限り、2ストOILが付着してるので錆びている事はありません。
 
@  写真左側がメインクラッチ側で右側がマグネットローダー側(発電機)

 
A  クランクシャフトをケースから取り外した写真です、両端の黒いゴム上の輪はオイルシール、他はクランクとベアリング

   
 激しい縦傷とリング変形陥没

 折れたクランクが回転して上ケースに亀裂ができた

 エンジン焼きつきを起こさせない対策

@ 常に信頼できるメーカーの2サイクルOIL注入を行う

A アンチスモークタイプの2ストOILを選ぶ

B 走行が短距離で2ストOILが余ってもシーズンOFFとなったらOILタンクから抜き取る

C OILタンクに水滴などの侵入をさせない

D −20度位まで耐えられるスノーモービル専用の2サイクルOIL注入を行う

E シーズンOFFとなった2ストOILの再使用はしない

 エンジン焼きつきを起こさせない整備

@ 3年に一度、OILタンク〜OILポンプ間のホースを外してガソリンで洗浄する

A 5年に一度、OILフィルター内をガソリンで洗浄

B OILホースやOILタンクそしてOILフィルター内にヘドロ化状の劣化OILは危険です、OILポンプ内で詰まったり、塞いだりするので完全に取り除く

C オーバーヒート等を避ける為にも、4000km以内を目処に上下ピンストンリングと付属部品の要新品交換

D 例え4000km以内であっても製造後20年を目処に上下ピストンリングと付属部品の要新品交換

E 5シーズンを超えたらOILポンプを車両から外してケース内部ギヤへグリスUP兼必要に応じてOILポンプケースのOILシール交換も行う

F キャブレターのオーバーホール、ニードル周辺の洗浄、スローバルプの洗浄、チャンパー内の浮遊物バナー焼却等

  2ストOILの選び方

 2サイクルエンジンを搭載したスノーモービルは、必ず2スト専用OILが不可欠です、しかし2ストOILなら何でもよいか? 

そこで注意して頂きたいのは、確かに2ストOILと掲示してありますが、環境面から云えばスノーモービルを走らせる季節は主に氷点下の雪上が原則です、同じ2ストOILでも常温で使用しているOILでも問題ないか? っと申せばよくありません。

スノーモービル専用の2ストOIL使用が原則となります、その理由は氷点下の中で高速回転を求める為、一般の2ストOILでは耐え切れません。
スノーモービルメーカー各社で販売されている専用OILを使う事が間違い御座いません、しかし値段も相応で中々使い難い面が御座います、そんな中でも多くのモービルに愛用されている2ストOILは、MOTUL(モチュール)SNOWpower(スノーパワー) アンチスモークタイプ、以前からライダー間に信頼を得ており多くの愛用者が多い様です、OILサイズは1L及び4Lの二種類に分かれており、各々の用途に分けて購入するとよいでしょう、また同じスノーパワーでもアンチスモークタイプを選ぶ事でチャンパーから出す2スト車特有の煙排出を抑える効果が期待できます、煙排出が多い分チャンパー内に抑留し蓄積するので、何れはチャンパー内が詰まって仕舞う為時々強力バーナーによる焼却を施さなければならないので、アンチスモークタイプが不可欠となります。


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