ヤマハ発動機 スノーモービル ET340のロングトラック化

改造前の純正ショートトラック

 

 改造後のロングトラック





 改造前のET340純正トラック長は121インチのショートトラックでラグはペラキャタ仕様となっています。

 積雪の多い年ですと、ワカサギ釣りを行う湖上では一夜にして40cm以上もの積雪も珍しくなく、数年間大雪が続くと、逆に大変積雪の少ない年が数年続く等、近年は交互にやって来る傾向が見られます、そういった流れの中で積雪の少ない年に偶々スノーモービル購入された場合、自身のスノーモービルってどの程度の走破力があるのか? 体感出来ずに所持されている方も多いものです。

 雪原(湖上)走破力に影響を及ぼすのが@車両重量(軽量程よい)、そしてAトラックの長さ(長い程スタックし難い)、最後に雪原を蹴り上げるBラグ(爪)の高さこれらの総合バランスが大きく絡んでいます。

しかし、大排気量エンジンの場合パワーがあってもそれなりに車両重量も重く、逆にスタックしやすい特徴が生まれて仕舞い、基本軽車両にロングトラック化することで雪原に加わる重圧圧雪力となり、圧雪面積に対する車両重量とのバランスが決めてとなります。

ただし、ロングトラック化をしすぎるとクローラ(キャタピラ)を廻すパワーに食われ、トルク不足が目立ってしまうので、その絶妙なバランスが最重点となります。

今回交換したロングトラックと以前使用していたショートトラックの違い

 

 トラックの計測

 スノーモービルトラックの長さ表記は一般にインチで単位を表しております。 メートル法に直すのであれば1インチは2.54cmで計算されるとよろしいでしょう。

ヤマハ発動機のスノーモービルは121インチ−162インチ、リンク(穴のサイズは2.52ピッチ)の物が殆どです。

例 2.52インチ(ピッチ)×2.54cm=穴のサイズ64mm

今まで履いていたトラックの長さは121インチ、上記写真上の赤印の穴数が全部で32リンク(穴の数)×3.78ピッチのクローラから、写真上の黄色の穴数54リンク×1個の穴2.52ピッチ、長さは136インチのペラキャタへの交換となります、従来の圧雪面積は上記写真の突き出た部分が新たに加わる圧雪部分になります。

写真上で見るトラックのリンク、つまり穴の大きさ(黄色印・赤印)が各々が違っているので、現行のスポロケットとかみ合う事ができません、従ってトラックのみの入れ替えではサイズが合わない為、入れ替えができません、その場合新たなリンクサイズ(クローラ)に合ったスポロケットギヤー一式同時交換しなければ装着できません。

11丁スポロケット ⇒ 新7丁スポロケットへ交換し、同時に7丁スポロケット仕様のギヤーケース一式も同時交換が必要となってきます。

これらの作業をを行う事でショートトラックからロングトラック化へ前進を図ります。

ロングアンダーフレームとショートフレームの違い

 

 クローラ交換と一体化しているアンダーフレームですが、こちらもクローラに合わせたサイズへ変更しなければなりません、スノーモービルマニアですと後部フレームから更に延長プレートを自作いたし、最後尾ホイール位置を延伸ばさせてロングクローラ装着を図ります。

では順を追って入れ替え手順を掲載しますが、作業をし易くする為予め以下の個所から先に外して行く

 事前撤去するもの @ マフラ- A 駆動ベルトカバー B 駆動ベルト

 
赤丸で囲った部分をすべて外す



 
赤丸の駆動ベルトカバー二箇所を外しベルトも撤去する



@  駆動ベルトを外す前に先にブレーキをロックさせる




A ゴム手を嵌め赤丸部分のみを両手でしっかり掴んで太やじるし方向へ廻
すとベルトプーリー間が広がるので、細やじるし方向にベルトを落とす(外す)

 
B クラッチ(メイン)側のA方向へベルトをくぐして外す

 

 ヤマハスノーモービルのベルト交換及び撤去する場合

@ ブレーキを先にロックする

A センカンダリークラッチプリーの内側板(太やじるし部)廻す、@方向へ落とす

B @のセカンダリークラッチ側のベルトが外れたらクAのラッチベルトを矢印の方向へ外す
 

 このスプリング2か所を外す際は、必ずスプリング外し専用工具を用いて撤去して下さい。

 結構強力なバネで、過去電線を巻いて強引に引いて外しましたが、電線が切れ手を深く切って結構なケガをしました。

専用工具は近くのアストロプロダクツでも売ってますが、大と小の専用工具があれば、必ず大を選んで下さい、大ですと両手でしっかり持てる分、ぐっと力を入れやすく取り外し操作が楽です。

また、スノーモービルマフラーは各社この手のスプリングで固定しているので、他の個所でも使う工具です、ですから態々購入しても損はない専用工具ですね!!


 Amazon スプリング専用外し工具
  作業し易くする為チェーンブロックやホイスト等を用いて車両30cm前後つりあげる

 

後部から順に黄色矢印のボルトを外すが、裏側も同様で左右対象に!!

ボンネント右側のワイヤーケーブルとベアリングを撤去

 

ギヤケースを空けて下部ギヤーのボルトを外す

 

  スピードメーター用のワイヤーケーブルとベアリング、そしてベアリング固定ケースが内外に装着されているので、抑えているボルト3本を外す。
 
 ギヤケースは上下2本のボルトで止まっているので外す、その際中のギヤOILが流出するので、予めボンネットの下からギヤOILがこぼれても受けられる様トレイ準備をしておく、
 
 

  ボデー下の脱着作業を易くする為、ボンネットもホイストウインチ等を使って80cm程度つりあげると作業しやすいです、スポロケットシャフトは右方向へ引き抜きますが、クローラの突起が食い込んでいるので、片手でクローラ突起を持上げながら、片手でシャフトを右側へ引き抜く感じで作業します。
 
 左側シャフト端中央に見える黒い部分はOILシールです、ギヤOILが漏れないように塞いでいます、上記写真内のボルトナットを外す事で引き抜く事ができます、ただしクローラ突起がスポロケットへ食い込んでいる制で簡単にはズレないので、クローラとスポロケットの間にバールを刺し込んでクローラを一旦上に持ち上げながら矢印方向へ引き抜くと外しやすいです。

ET340ショートクローラは11丁スポロケットが装着されている為、7丁スポケットへ変更必須

 

 

 ET340やS340はピッチサイズ違いでロングクローラのみの交換ができません、この場合装着されていた11丁スポケットから7丁スポロケットへ交換することでロングクローラとのピッチサイズが合います。

しかし、7丁スポロケットへ交換するとスポロケットシャフトの端がギヤ本体へボルト固定できなくなるばかりか、無理に固定してもガタ(隙)がでるので合いません

その様な訳で、7丁スポロケット専用のギヤケースも同時交換が必要となります。

幾度か経験しましたが、クローラの変更を行うと、穴のサイズ(ピッチサイズ)が必ず同じとは限りません、一般にヤマハ発動機のクローラピッチは2.52インチのクローラ採用は多い、しかし1992年以前のショートトラックは、ピッチサイズが7.56インチ、11丁スポロケットでまったくかみあいません、一方のロングトラックピッチサイズは2.52インチとなる為交換不可となって仕舞います。

その様な理由から@ロングクローラへ交換する場合は、A7丁スポロケット、B7丁ギヤーケース一体、この3点を同時交換しなければなりません。

ギヤケース交換する際は、一旦赤丸のボルト2か所を外してギヤOILを先に抜きましょう、モービル内の底に流出し、マフラー穴を経由して地面へ垂れ流れるので、受け皿を準備して作業開始する。

蓋を開けたら、3段上の写真に写るギヤケース内のボルトを外す、次に黄色丸のボルトナット4か所を外すとギヤケースが抜けます、ただしブレーキワイヤーは繋がったままなので、下記写真の赤丸個所、割ピン2個所を抜かないとワーヤーと分離できません。
 

 左側写真のギヤケース赤丸の下側に割ピンが見えると思いますがこれを先に外します、上の赤丸は反対側に割ピン装着されているので手狭で作業が出来ません、、なので私は先にギヤケースを外してから、作業スペースを確保し反対側の割ピンを抜いたらすんなり作業が出来ました。。
 これで、クローラ、アンダーフレーム、ギヤケースの3点を外すことができました。

これより先、履き替える中古クローラとアンダーフレームを掲載します。

下記2枚の写真はクローラに装着されている「ネル」、言い換えれば爪の部分です、この部分が見て判る様に結構錆びます、特に中古クローラは表で放置される場合が多いので錆が酷い状態です、この錆びを落とし研磨してしないと、更に下の写真で判る様にプラスチックレールの立ち上がり部分へ著しく摩耗させて仕舞います。

載せ替えるクローラは54リンク ピッチサイズ2.52インチ 長さ136インチ つまりこのネルが54×2倍 合計108個所研磨します、当初の頃は紙やすりを手に持って半日以上かけて研磨したものですが、あまりに疲れるので、現在はベルトサンダーを使って磨いています。 

さすがに工具を使うと即綺麗だし楽できますね、ベルトサンダーにも2種類ありましてエアー式と電気式とがありますが、エアー式の場合大容量(200V)コンプレッサーで無ければエアー不足となってしまい、、エアーが持ちません、この作業の為に今の家庭用100V静音コンプレッサーから動力(200V)コンプレッサーへ載りかえるのもつらく、他にないか探したところ、電気式ベルトサンダーを旧リョービで出していたので購入しましたが、現在の値段はアマゾンで11500円  今は京セラで販売している様です。

もちろんコンプレッサーが大型で余裕があるのであればエアー式の方が遥かに安価で購入できます。

何れにしても、放置されていたクローラ内のネルは激しく錆びだらけになるので、一旦研磨する必要が御座います、知らずして走り続けるとプラスチックレールが熱で解けアルミ製のアンダーフレームまで削って仕舞います、 ここまでやって仕舞うとアンダーフレームまで丸ごと交換しなければならないので探すのが大変です。

特にプラスチックレールを溶かす原因は、@ 雪の少ない、または凍り上で運転する A 急坂を登ってはジャンプ後の着地 これが一番ダメにする運転です。

通常、シーズン前にクローラを浮かし、エンジンをかけ軽くクローラを回転させながら、OILスプレーを用いてすべてのネルに十分行き渡る様に塗布、更に仕上げとしてシリコンスプレーを塗布させて完了する、可能ならばシーズン途中も行えば尚よいでしょう!!  そして乗り終えてから保管する前も塗布しておけば錆びから保護ができます。


旧リョービ製 電気式ベルトサンダー

 

黄色の枠の赤さび、右側は研磨済み

 

長年放置されていたクローラ

 

駆け上がり部分だけが異常摩耗

  

錆びだらけのネルのまま走行した場合

 
 
ゴロゴロと抵抗のある様なベアリングはすべて交換する



 
  ベアリング外し機を使ってシャフトからホイルを抜く、バネ式輪リングも抜きそれからプレス機にセットしベアリングを抜く。

 プレス機の持ち合わせがない場合は、万力に挟んベアリング外径に似合ったでロングソケットを当てながら押し込んでも出来ないことはありません。

以前プレス機が無かった頃はその様な交換方法でした、ただ最終的に万力破損させて仕舞いそれから門型プレス機の購入に至りました、あれば便利ですが、エンジン腰下のギヤ、ベヤリング、クランク、OILシール等を外す時は必需機械ですが、普段は物が大きく保管場所も取るのでお邪魔です、なのでどうかなぁ、とも感じます。
 Amazon各種ベアリング外し機     Amazon各種ベアリング

門型式の6トンプレス機使用、叩いての挿入は絶対ダメ!!

 

サイズに似合ったアタッチメントで押し込む

 
 
 旧式スノーモービルのホイール中心部には大小のベアリング装着が御座います、走行距離や野外等の保管場所等にも左右されますが、シーズン前にクローラ整備と同時にクローラ後部のテンションを緩め、次にホイールを手で廻し異音、ガタ、錆び等点検、何もない事を確認したらOILスプレーやシリコンスプレーを十分塗布する。

ここまでが装着前までの準備が終えましたので、いよいよ装着について掲載します。

 

クローラが長くなると垂下がる為、赤丸部分へ右写真のホイールを新装着

アルミ板補強の為、黄色丸のホイールシャフト軸受をL板プレートで新規

装着し補強をはかる、プレート板は中古モービルに着いていた物を再利用

プレートを留めるリベットはラージサイズのリベットを使用するが、手動リベッ

ターでは握力不足で作業ができないので、エアーリベッターで固定するとよい

Amazon エアーリベッター     Amazon ラージリベット
 

 

 

 
 
 
 
 
 ちょい見難いですが、車体とアンダーフレームを接合している最後尾の個所がロングクローラへ再装着の為、接合プレートを後方へ移設しなければなりません。
どの程度の移設長さかはロングクローラにアンダーフレームを装着させて、位置決めを計ります、その前に接合プレートを車体から一旦撤去いたし、位置決め後に再装着します。

ここからは最後部の作業工程掲載

 

下の写真は左右の接合プレートを外す写真です。

 

   ジスクグラインダーを使って左右の接合プレートの裏側の突き出たリベットをすべて削り落とし、それからバールで抉るとプレートを撤去できます。
 バールで抉った時多少プレートが歪むので、万力に挟んで極力ストレートへ戻してからシャーシコートスプレーで塗装し再利用します。

 次にロングクローラに対し車体が短くなるので延長加工に入りますが、作業に際し邪魔となる部分を撤去します。

 @ 椅子 A 最後尾バンパーと反射板 B 泥除けカバー

 ホームセンターからアルミアングル40mm×40mm×3mm(厚)長さ1mを二分し装着します。

 

↓ 写真のアルミアングルの上面と真横面をそれぞれラージリベット止めする

 

 黄色線で示した部分が後部延長部分です、延長部分は中古車両の後部を切り取って接合しました、ショート車両の制か延長部分の直下に車両との接合部が伸びました。

車両は大半がアルミボディーなので穴開けや削ったり等は手間がかかりません、しかしその制で荷のかかる場所には鉄製の補強プレートが使われています、工具としては穴開け用のドリルドライバーやインパクトは必要工具となります。

また、クローラを交換する場合は、車体の前部(エンジンルーム)は500kgチェーンブロック使用、後ろは250kgホイストで釣りながら一人作業を行いました、仮にない場合はハイリフトジャッキ等で代用できると思いますが、車両を上げた際不安定だと落下などが心配され超危険です、今後行われる方はできるだけ事前に使用工具を揃えた上で、急がす注意を払って作業を進めて下さい。

 
 
 @ 車体の延長部を接合させ完成させる A 車体とアンダーフレームを接合させる B 左右の反射板を設置する C 泥除けを装着する D 最後に後部バンパー装着する

 外す時は一瞬で簡単ですが!! 下記写真の黄色丸個所は、接合する際に強いバネが効いておりAボルトを捻じ込むのが大変でした、@とAの2つボルトを嵌めるだけですが、先に@のボルトを入れてから、Aを嵌めるのですがまったく穴位置がズレており合いません、下記右側の写真を参照して頂くと理解し易いと思いますが、Aボルト直下の突起に自動車用ジャッキを用いて押し上げるながら穴位置を探り合わせて挿入しました、、、

   
 
 クローラ交換で一番厄介な作業として、下記写真のやじるし先のボルトを入れる接合作業です、もう一度書きますが外すときは超簡単です。

 しかし嵌める際は、車体とアンダーフレームとの穴位置を合わせるのに大変苦労します、過去に無理やり捻じ込んでボルト山を舐めてしまった事もあります、車両を浮かし過ぎると逆にアンダーフレームを上昇させねばならず、重くむりなんで上下の作業が上手く噛み合いません。

 今まで幾度か経験した中で、先にアンダーフレーム側の置く位置をだいだい決めたら動かさず、釣りあげた車体を少しずつ下降させながらアンダフレームとの穴位置が見えるまで下げていきます、極端に穴位置ズレが著しい時はアンダーフレームの全体の位置替えを行い、再度車体を上昇させては下降を繰り返し、最終的に車体とアンダーフレームとの固定位置穴が重なったら(多少見える様になったら)、挿入ボルト幅と同等の刺し(伴線等で使用する先の尖った鉄棒)を刺し込んでから穴位置が中心に来る様、左右上下方向へ矯正させながらボルト挿入し固定しました。

幾度かクローラの撤去や交換作業を行いましたが、私的には車体を釣って上昇させる交換の方がし易いですね。

 
 最後のまとめ 

 ここまで興味を持って見て頂き大変有難う御座いました、如何でしょうか? お役に経てれば幸いです。

如何せん大変超なスノーモービルです、相応な経年劣化でエンジンがダメになれば廃車も仕方が御座いません、しかし動かない中古車両となってしまってた後でも見方によっては部品取りをしますといろいろと使える場合も御座います、もちろん車両が違って合う部品、合わないは部品が混在しますので、その部分のみメーカーへ尋ねた所で余程の事でもない限り先ずもって教えては頂けません、、、、そこへ改良や改造行為はメーカー事態神経を尖らせているので厳しいでしょう。

従って興味をもって改良を加えているマニアだけが知っている部分です。

最重要なのは、どなたも雪上スタックはしたくないと思います、特に経験者であれば僅かながらでも走りを向上させられればと願っていると思います。

従って新車を買えば即解決しますが、僅か数か月の期間しか乗れないスノーモービル、新車購入致せば数百万円は下りません、それだけの大金を出す気も中々起きないと謂うのが実態かと思います。

中古同士の合体ですが、ショートトラックからロングクローラへ履き替える事で、過去スタックし立往していたのがこの改良で一定程度の降雪でも格段に走破力を増した筈です、是非グレードアップ時のご参考にされては如何でしょうか。 

 完成車両の駆動試験



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